じゃがいもを主食とする国はある?世界のじゃがいも事情とマメ知識
日本でも馴染みある野菜、じゃがいも。じゃがいもは、世界中で色んな料理に使われます。日本人が米を主食としている様に、世界ではじゃがいもを主食とする国があるのでしょうか?じゃがいもにはどのような歴史があるのでしょうか?気になるじゃがいものマメ知識をご紹介します。
じゃがいもは、栽培の手間があまりかからない野菜です。春と秋の年2回栽培でき、保存もできるので家庭菜園にもオススメです。そしてじゃがいもと言うと、北海道のイメージが強いですね。しかし、じゃがいもの原産地は日本ではありません。まずは、じゃがいものルーツと日本に伝わるまでをご紹介いたします。
じゃがいもを主食とする国はある?じゃがいもの歴史① 原産地
じゃがいもの原産地は南米アンデスからメキシコにかかる高原地帯で、現在でもじゃがいもの野生種はアンデス高原に存在します。じゃがいもは紀元後500年頃から栽培され、世界遺産である空中都市マチュ・ピチュの段々畑でもじゃがいもは栽培されていました。また、ペルーからチリにかけての地域は世界三大穀物の一つであるとうもろこしの原産地でもあり「じゃがいも」と「とうもろこし」はインカ帝国の主食であり、インカの文化を支えていた食材とされています。
空中都市マチュ・ピチュ 美しい段々畑の風景が広がります。
じゃがいもを主食とする国はある?じゃがいもの歴史② ヨーロッパへの広がり
16世紀頃、スペインによるインカ帝国の侵攻により、インカ帝国は滅びます。じゃがいもはスペイン人の手により、ヨーロッパに持ち帰られました。持ち帰られた当初、じゃがいもの食べ方を知らないヨーロッパの人々は、食中毒を起こす事もありました。しばらくの間ヨーロッパでは、じゃがいもの花や実を観賞する為の観葉植物として主にフランスの宮殿等で栽培されていました。
食用としてヨーロッパでのじゃがいもの一般的な普及は、18世紀頃と言われています。深刻な食糧飢饉に悩むドイツのフリードリヒ大王が、じゃがいもの生産性に目をつけました。そして民に栽培を推奨し、じゃがいもは大きく広がりを見せました。
フリードリヒ大王は民衆の前で、自らじゃがいもを食べてみせ、安全性を強調しました。
じゃがいもを主食とする国はある?じゃがいもの歴史③ じゃがいもが日本に伝わる経緯
じゃがいもは1598年(16世紀後期)にオランダから長崎に伝わったとされています。当時、オランダはジャカルタを足場にしていた事もあり、じゃがいもはジャカルタからオランダ商船によって渡来しました。じゃがいもと言う名称は、ジャカルタに由来しており(ジャガタラ芋と言われていた)その経緯に深い関係があると言えます。
じゃがいもを主食とする国はある?じゃがいもの歴史④ じゃがいもが日本に伝わって以降
じゃがいもは日本に伝わりましたが、あまり普及しませんでした。味が淡白で当時の調理技術では、日本人の口には合わなかった為です。その後、約100年の歳月を経た1700年代、じゃがいもは寒冷地でも栽培が出来る事から、その気候や土壌に適している北海道に普及します。後に、じゃがいもの新品種導入が進みます。1900年初頭に北海道の川田龍吉男爵がイギリスの「アイリッシュ・コブラー」と言う品種を導入し広がりました。日本で有名なじゃがいもの品種である「男爵薯」は川田龍吉男爵にちなんでいるとされています。
他の野菜に比べ、痩せた土壌でも育つじゃがいもはとても有り難い野菜です。
じゃがいもを主食とする国はある?じゃがいもの歴史⑤ 現代までのまとめ
昭和初期、日本でもじゃがいもは主食の代わりになる程の貴重な食べ物でした。米不足や戦争の影響による食糧難で一般人が貧しい生活を強いられた時代、腹の足しになるじゃがいもは大変重宝する、主食と言っても過言でない食材として、我々の先祖を救ってきました。じゃがいもはインカ帝国の時代から、現代に至るまでの私たち日本人にとっても、大切な野菜である事がわかります。
ここからは、じゃがいもの消費量が多い国をご紹介いたします。(*消費量と生産量は異なります)
じゃがいも消費量の多い国(一人あたりの年間平均値)
*一人あたり年間平均でじゃがいもを100kg以上消費する国*
①ベラルーシ(182.8kg)
②ウクライナ(133.2kg)
③ポーランド(116.9kg)
④カザフスタン(114.7kg)
⑤ロシア(114kg)
⑥アイルランド(110.8kg)
日本との差は歴然です!
国別じゃがいも消費量 まとめ
一位であるベラルーシは、じゃがいもの消費量が182.8kg!!日本のじゃがいも消費量に比べ、およそ8倍強です。日本の主食である『米の消費量』は「一人あたり年間平均約60kg」と言われていますが、それと比較しても上位の国々のじゃがいも消費量は桁違いであり、この数字から見てもじゃがいもが主食と言って過言では無い気がします。日本でもじゃがいもを使った料理は数多くあり、そこそこの消費量だと思っていましたが、じゃがいも消費量別で国を見ると、その差は歴然である事が解ります。
じゃがいもの原産地は南米アンデスからメキシコにかけての高原地帯で、スペイン人によってヨーロッパ諸国に広がりました。地図で見てみると、じゃがいもの消費量が多い国は、ヨーロッパ諸国や中央アジアとヨーロッパに股がるカザフスタンなどロシア周辺国々にも分布している事も解ります。
ヨーロッパ諸国の地図で見るとじゃがいも消費の分布が解りやすいです。
地図で見るじゃがいも消費大国分布 まとめ
この様な国々になぜじゃがいもが普及したかを考えると、やはり気候や土壌が深く関係しているのではないでしょうか。この国々は、北海道より緯度が高い所が多いので、寒さに強いじゃがいもの「生産性の高さ」が重宝されたと思われます。また、領土の侵略の歴史背景による食糧難や飢饉を考えれば、荒廃した土壌でも育ち、保存が出来るじゃがいもは民の命を救う立派な食料だったとも言えます。
『ドラニキ』はベラルーシの国民食で、東欧で広く食べられている美味しいじゃがいもパンケーキです。
材料(1人分)
・じゃがいも:4~5コ
・生卵:1/3程度
・ニンニク:少々
・豚挽肉:150g
・小麦粉:大さじ1
・タマネギ:1/5
・塩 コショウ サラダ油:適量
・サワークリーム:適宜
『ドラニキ』手順①
(下ごしらえ)
❶生のじゃがいもをすりおろし、じゃがいもから出た水分を捨て、小麦粉少々、生卵、サワ ークリーム少々、塩を適量入れ、全体をよく混ぜます。
❷豚挽き肉にタマネギのみじん切りとおろしニンニクを混ぜ、塩・コショウで味を調えま す。
『ドラニキ』手順②
・フライパンを熱し、全体に回るぐらいの量のサラダ油を入れます。
・❶をフライパンに少々入れ、その上に❷を一握り程度とって中央にのせ、さらに❶を上からかけます。
・底面に焼き色が付いたら、裏返して同じように焼きます。
『ドラニキ』手順③
よく火が通り、周りがサクサクしたら皿にのせ、表面におろしニンニクを塗ります。お好みでサワークリームを周しかけ飾りつけます。
『ドラニキ』まとめ
『ドラニキ』は1人分に対し、じゃがいもを4〜5コも使います!びっくりです。この料理一つとっても、ベラルーシのじゃがいも消費量が高い訳が伺えますね。また、ベラルーシの人は「ブリビャーシュ」(ベラルーシ語で「じゃがいも人」)というあだ名があるほどじゃがいもを多く食べることで知られているそうです。じゃがいも人と呼ばれるのも納得です!
①中国(9,594万1,504トン)
②インド(4,534万3,600トン)
③ロシア(3,019万9,126トン)
④ウクライナ(2,225万8,600トン)
⑤アメリカ(1,971万5,480トン)
国別じゃがいも生産量 中国のじゃがいも主食化計画
中国は2020年までにじゃがいもの作付面積を667万ヘクタール以上に拡大することを掲げています。
中国は2016年の2月に「じゃがいも産業開発推進に関する指導意見」を出しました。平たく言えば、小麦、米、トウモロコシに次ぐ「じゃがいもを第四の主食とせよ」と言う大号令です。2020年までに「じゃがいもの作付面積拡大、30%以上を主食に適した品種とすること、主食消費量の30%をじゃがいもにすること」を掲げています。『じゃがいも主食化』の理由の一つとして、人民13億人の食料確保です。戦争や天災などの食糧危機に備えて自国での供給体制を整えておこう、と言う目的です。また、深刻な水不足や水質汚染の影響からも、あまり水を必要としないじゃがいもの栽培を推進しています。しかし、人民からは「芋を主食にするのはちょっと・・」と言う否定的な反応が出ているようです。
国別じゃがいも生産量 まとめ
中国の「じゃがいも主食化計画」もさることながら、じゃがいもの国別生産量は、広大な面積を保有する国とその人口の密度にも関わりがあると思います。また、ロシアやウクライナの様な気候(寒さ)が厳しい土地でも、じゃがいもの生産量が多い事が解ります。ちなみに日本のじゃがいも生産量は、世界で見ると26位で、国内では北海道が77%を締めています。
じゃがいもを主食とした場合、気になるのがその栄養素です。最近ではダイエットで米からじゃがいもに主食を変える、という記事も見かけます。じゃがいもにはどのような栄養素が含まれているのかを見て行きます。
ジャガイモには複数の有効成分が含まれています。
じゃがいもに含まれるビタミンC
老化や病気から体を守るビタミンC!!
じゃがいも(100gあたり)にはビタミンCが多く含まれています。ほうれん草やみかんと同じくらいです。また、じゃがいもに含まれるビタミンCはでんぷん質に守られているので、熱に強いので、加熱する料理に向いています。ビタミンCは、風邪の予防や疲労の回復、肌荒れに効果があります。
じゃがいもに含まれるカリウム
じゃがいも(100gあたり)にはカリウムが315mg含まれています。ちなみにカリウムを多く含む果物のバナナ中1本(150gあたり)には、540mg含まれています。カリウムは体内の塩分をコントロールする働きがあり、利尿作用によるむくみ改善や、高血圧予防にも効果があります。
注意!じゃがいもに含まれる有毒成分 有毒物質ポテトグリコアルカロイド(PGA)
じゃがいもの芽や、皮の青い部分は有毒成分を含んでいます!
ジャガイモの芽の部分や、緑色をした皮の部分にはポテトグリコアルカロイド(PGA)という物質が含まれており、一般的には「ソラニン」と呼ばれ、とても危険な有毒成分です。ソラニンはチャコニンと共にポテトグリコアルカロイドの一種です。有毒成分を一定量を摂取してしまうと、頭痛や腹痛、嘔吐等の症状を引き起こします。また、重症の場合には脳浮腫を生じたり、小さな子供だと死亡してしまう事も稀に起こり得ます。昔から、じゃがいもの芽は毒がある、と言いますが、本当に危険なのでご注意ください。
じゃがいもと米のカロリー&栄養素比較 主食にするならどっち?
米からじゃがいもに主食に変えてダイエットする、と言う記事を見かけますが、主食をじゃがいもに変える利点はあるのでしょうか?では、米、食パン、じゃがいものカロリー&糖質を比較してみます。
・ご飯(白米):168kcal:糖質31g
・食パン:264kcal:糖質48g
・じゃがいも:76kcal:糖質17g
結果、じゃがいもが一番低カロリー、低糖質である事が解ります。
日本人にとって馴染み深い主食 米
米の利点は、じゃがいもよりもたんぱく質やアミノ酸のBCAAが多い点です。また、繊維質が少ないので、消化に良いと言われています。
じゃがいもと米のカロリー&栄養素比較 主食にするならどっち?まとめ
実際、カロリーや栄養バランスを見るとじゃがいもがダイエットにも効果的で、かつ栄養バランスも整っているので、主食としても充分成り立つ事が解りました。米かじゃがいもか、選ぶのはお好みです。(日本人としては、やはり米を欲してしまいますが・・)いずれにせよ、過度の炭水化物抜きダイエットは身体に支障をきたすのでご注意ください。
じゃがいもの歴史やマメ知識をご紹介いたしました。じゃがいもの消費量が多い国にとって、じゃがいもは『主食』と言えます。また、中国のように「じゃがいもを主食とする事」を国の政策として打ち出す程にじゃがいもの生産性の高さが伺えます。じゃがいもは古くはインカ帝国の時代では主食であり、また、船乗り達や、冬を越さなければならない厳しい土地の人々にはとても重宝された野菜であり、貴重な栄養源であると言えます。