2016/05/30
pococo
〈シベリア〉と言うお菓子をご存知だろうか?名前だけ聞くとシベリアから連想して氷菓かな?とも思うし・・・ロシアンケーキの様な焼菓子かな?とも思ったり。一時は製造すら危うくなり、絶滅の危機に瀕していたシベリアと言うお菓子はまさかの餡子系。なぜこれがシベリアなの?!
結論から言うと、考案者、発祥地、名前の由来全てが不明と言う謎に満ちたお菓子。食べた事のある人なら分ると思いますが、カステラの甘さと羊羹の甘さのせめぎ合いの様なお菓子?甘さ控えめが多い中で、絶対控えてないでしょ?と言いたいくらい腹にもガツンと来る代物。お菓子とも言い難くパンとも違うし、かと言ってスイーツに属するのかどうかも判らない不思議な食べ物です。
明治後半から大正初期にかけてと言うから相当昔からシベリアと言うお菓子は存在していた様で当時、どこのパン屋さんでも製造販売していたそうです。誕生したのも同時代ではないかと言われいます。その頃、学生をターゲットとしたミルクホールなる飲食店が多く出現しそこでもシベリアはガラスのショーケースで売られていました。何とも大正ロマンを感じるお菓子です。
シベリアと言うお菓子を説明する時に「カステラの間に羊羹を挟んだサンドイッチみたいなもの」と言うと「ああ。わかった!あれね」で伝わります。でも、製造工程で言うとその説明は不正解です。
そんな単純な事ではありません。あらかじめ焼いたカステラ生地の上に、固まる前の羊羹を流し込み、その上にまたカステラ生地を被せると言う工程があり、先ずカステラを焼くそして小豆と寒天を煮て羊羹を作ると言う実に手間がかかる工程を経ている訳です。それをしないとカステラと羊羹部分が密着せず剥がれてしまうんです。シベリアと言うお菓子が絶滅の危機に瀕したのは、この辺りに起因してるのではないでしょうか?
外国を含め、関東以外の地域で同じようなお菓子の存在は認められないそうです。食材が餡子と言う点からしてロシアのシベリアとの関係性は希薄と考えていいでしょう。このお菓子の発祥は当然シベリアではないですよね。
説1:ツンドラ(永久凍土)説
カステラと羊羹をツンドラの断面に見立てたと言うのが1番よく言われている説
●侘び寂びの日本人的発想だったのでしょうか?
説2:シベリア鉄道説
カステラ部分を氷原に羊羹部分をシベリア鉄道に見立てた
●わかる気がします
説3:シベリア出兵説 説4:日露戦争従軍説
〈3〉
シベリアは極寒の地。羊羹を兵隊と見立て寒くないようにとカステラのオーバーで包んだ
●ちょっと無理があるも
〈4〉
1904年に起こった日露戦争で、従軍していたお菓子職人が考案した
●戦争の思い出に繋がるのって嫌じゃないかな?
説:5
ロシア革命で日本に亡命した貴族の娘が、恋人の亡骸が眠るシベリアの凍土を想って作ったお菓子
●この説が由来だとしたら、シベリアが哀愁に満ちたお菓子に見えて来ます
カステラと餡子の組み合わせが和菓子を思わせますが、和菓子屋さんでは作らなかったのでしょうか?昭和初期にはシベリアが子供の食べたいお菓子ランキングで堂々の1位。当時、1個5銭~10銭で売られていたそうです。通貨単位が円じゃないのでピンと来ませんが、10銭でりんごが2個買えたそうですよ。
1916年創業、横浜のコテイベーカリーさん(ウィキペディア記載)によると、パン焼窯の余熱利用でカステラを作りあんパンに使用する餡を使って作られていたそうです。パン屋さんで和菓子の様なシベリアが売られていたのはこんな経緯があったんです。
シベリアケーキとも呼ばれたこのお菓子は、パンに比べ作るのに格段の時間がかかりました。パンも多様化し種類も増えるに連れ、作るのに面倒なシベリアと言う大正ロマン漂うお菓子は、その甘さも時代にそぐわなくなりパン屋さんから姿を消して行ったと思われます。そんなシベリアに再び光が当たったのはジブリアニメ「風立ちぬ」の中で主人公の堀越さんがこのお菓子を買い求めるシーン。ネットユーザーの間でも話題となり注目を浴びる様になりました。
様々なレシピサイトやお菓子メーカー等でアレンジされたシベリアが紹介されています。形状や餡そしてカステラにもオリジナリティーが感じられます。当時も白餡のシベリアがありました。
クリームチーズシベリア
《もりにゅうレシピ》より
クリームチーズと餡を挟んでいます
シベリア本舗
関根製菓のシベリア。通販でも購入できるみたいです
プチ・シベリア風 蒸しパン
《クックパッド》より
カステラの代わりに蒸しパンのシベリア
やはり何度見てもシベリアと言うお菓子は謎に満ちたお菓子。食べてみて思う事はこの甘さと質感を好んだ時代を旅してみたいと言う想い。シベリアをお菓子と位置付けた根拠が明治末期から大正初期と言う時代背景にあるのかも知れない事を見つけられるのではないだろうか。祖父母にとっては懐かしいお菓子。私達にとっては未体験のお菓子でありながら、どこか懐かしさを感じてしまう、時間を旅するお菓子だと思います。
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